ME/CFS患者や慢性疾患患者に言わないほうがいいかも(?!)な13の言葉

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*以下は、2015年10月にブログに載せた内容です。(現在2018年9月)

 
11歳の時に発病し、現在16歳の少年が自分が人に言われて嫌な言葉を素直に述べている
「ME/CFS患者、または慢性疾患患者に言ってはいけない13の言葉」という動画を見ました。
それに対する管理人(まーくハウス&ぷろじぇくと 代表:マーク雅子)のコメントです。
1、元気そうに見える。病気に見えない。

ME/CFS患者が元気そうに見えるのは、会う直前までエネルギーを温存し、比較的症状がましな日に会っているからです。
 
人に会ったり、何かの活動をする時は、活動後、または遅延して症状に襲われることを覚悟しています。
 
見た目ではわからない見えない痛みなどの内部障害もあります。
 
また、何日も苦しみ悶えてやっと回復した時に「元気そう!全然病気じゃないじゃん!」と言われると相手に悪意がなくても、時に悲しい気持ちになることもあります。
人にどう思われているかに振り回されないようになること、また、「理解できない人もいるのだ。」ということを患者自身も学んでいかなければならないなあと思います。

2、もしこれができるなら、あれもできるはず。
 
「病院に行ったり、人に会ったりできるなら、学校や職場にも行けるはずなのに。」
 
「好きなことだけやって、やらなければならないことを人にやらせている!」
 
「病気を理由に周りの人を支配している!」
 
「できると言ったのに、今更できないなんて、、、無責任だ!」
 
「多少、具合が悪くなっても、一度やると言ったことはやるべきだ!」
 
どんなに中傷されても、陰口を言われても、エネルギー産出の障害や起立不耐性、激しい痛み、インフルエンザ様症状などのせいで、一度再燃してしまえば、できると思っていたことも急にできなくなります。(とほほほ、、、)
 
無理をしてでもがんばれ!責任を果たせ!と言われても、急にガタンと崩れて、無理をすること自体が本当にできません。
 
見た目は健康に見える患者でも、活動量や活動時間が、自分の限度を越えれば、再燃して何日も、何週間も、時に何ヶ月も、寝込んでしまうため、常に自分の活動を調節する努力をしています。
 
だから、なかなか前もって約束ができない、また、ドタキャンする可能性があるということを患者自身も周囲に知らせておく必要がありますね。
3、よく寝れば、元気になる。
 
 寝ても疲れが取れないというのが症状の一つであるME/CFS患者に「寝れば、治る」と助言するのは、足が麻痺している人に、「歩けば、治る」と言っているような感じ?!でしょうか。
 
「寝て治るなら、もうすでにバリバリ働いてま~す!」とニコニコ笑って返せるくらいの余裕のある人間になりたいです!
 
4.よくわかる。私もいつも疲れているから。
 
「慢性疲労症候群?!私もその病気かもしれない。」という言葉を何度となく聞きました。(思わず、言ってしまった人に罪はない!)
 
啓発すれば、啓発するほど、病名が持つニュアンスで誤解が広がり、世間一般の「疲れ」や「慢性疲労」と混同されていきます。
 
現在は、多くの場合、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)と呼ばれています。
「筋痛性脳脊髄炎」「慢性疲労症候群」は、WHO疾病分類において、「その他の脳の病気」(神経系疾患)と分類されており、研究機関では、神経免疫系疾患として研究されている身体的疾患です。
 
 5、あなたはうつになっているだけ。
ME/CFS患者には、うつ病を合併する患者もいますが、ME/CFS=うつ病ではありません。
 
家族や友人だけでなく、医療者にも、一般的な検査では異常が発見されないため、主症状である身体的症状を信じてもらえず、「これは、あなたの心の問題だ。」とされてしまうことで、患者は精神的にも追い込まれてしまうことがあります。
 
うつ病自体も深刻な病気であり、周囲の理解と協力が必要な病気です。
うつ病を合併している患者は、日常生活の質を著しく低下させる身体的な症状に加えて、精神的症状にも悩まされているのです。
ME/CFS患者は、日常的に感じている全身倦怠感のほか、身体的、知的労作後に全身症状の悪化や言葉にあわらせないほどのだるさ、インフルエンザ様症状を起こします。
そのほか、短期記憶力の低下や話している途中で何の話かわからなくなるなどの認知機能障害、疲れの取れない睡眠や過眠などの睡眠障害、長時間頭を上げていられない起立不耐性などがあります。
全身の筋肉痛や関節、鉛のように重い足、頭重、脱力、こわばり、胃腸症状、、、
これに加えて、さまざまな合併症も併発しています。
 
 6、あなたは、病気になるには若すぎる。(少年は11歳で発病、現在16歳)
 
まだ、若いのに、かわいそうに、、、。
 
まだまだやりたいことたくさんあるだろうに、、、。
 
慰めの言葉も、善意として捉えられる余裕がある場合はいいのですが、言われた相手の精神状態によっては、傷口に塩をぬっているようなものになってしまうことがあります。
 

7、学校や仕事に行かなくていいなんて、うらやましい。

病人でなくても、人生には、苦難があります。
ストレスといそがしい毎日の中で、たまには、自由な時間を持って休みたいと思っている人からすれば、勉強も、仕事もしなくていい人がうらやましいと言いたくなる気持ちもわからないではありません。
 
もしくは、病気ではない人でも人生は大変なのだから、あなたもがんばって!という励ましで言っている場合もあるかもしれませんね。
 
ただ、多くのことをあきらめ、自由に外出することも、やりたいこともできず、毎日、症状に追われて、痛みや発作に苦しんでいる患者にとって、  「あなたがうらやましい」「あなたは恵まれている」と言われると、その時の精神状態によっては、複雑な想いにかられてしまうこともあるかもしれません。

 8、もっとがんばれ。
 
もっと動く努力をして、多少無理をしてがんばれば、治るという叱咤激励ですが、がんばりたくても、がんばれないのが辛いところです。
ME/CFS患者の特徴は、やりたいことはたくさんある、やる気があるが、それをするエネルギーが産出できない、激しい症状ゆえに実現できないことにあります。
がんばって自分のエネルギー範囲以上に歩いたり、無理をして活動をすれば、重症化し、取り返しのつかないことになります。
 
知的活動や身体的活動がその時は一時的にできても、その後に症状が襲ってくるというのがME/CFSの特徴です。(PEM:労作後の不調)
そして、なかなか回復しません。
 
筋肉を使わないと、筋肉が弱ってますます歩けなくなり、筋肉を使うと、ますます症状を悪化させるという現実の中で、いかに両者のバランスをとり、ペーシングをするかが患者の課題です。

9、もっと我慢づよくなりなさい。(良くなるから、それまで我慢しなさい。)

ME/CFS患者が「しんどい」「つらい」「痛い」と思わず言ってしまうことがありますが、我慢が足りないのではありません。
 
逆にいつも我慢しています。(笑)
 
時に20以上の症状を抱えながらも、1年、3年、5年、10年、20年、、、あきらめずに前向きに生きようとする我慢強い患者さんたちが大勢おられます。
 
逆に、「我慢づよいね。つらいのに、よく耐えてるね。えらいね。」と私は自分自身に声をかけて自分を励ましています。

10、これを試したことある?

 
病院や薬だけに頼りきっている人は本当に少ないです。
 
多くの方が、それぞれの症状への対処療法を行いつつも、回復を目指してありとあらゆる努力をしています。
 
「慢性疲労症候群」という病名を聞くと、「普通の疲れ」と誤解され、「これを試してみたら?」「あれをやめてみたら?」と助言していただくことが増えます。
簡単に治りそうな病名だからかもしれません。
感染症や毒素、化学物質、心理的ストレスなどのストレッサーが脳の免疫細胞を活性化させることをきっかけに、慢性的な脳の炎症を引き起こすことが最近の研究でわかってきています。
日本では、患者の約3分の1が寝たきり、または、それに近い状態であり、軽症や中等症の方も、人には見えないところで、非常に苦しい症状と闘っていることをご理解ください。
患者もまた、良くなってほしいというお気持ちは、ありがたく感謝して受け止め、自分にあうものを選択すればいいと思います。
 

11.これをやめてみたら?

「あれをやめてみたら?」「これをやめてみたら?」と助言されることも確かに多いです。
 
皆、良くなってほしいと思って助言してくださるのです。
 
人の意見をよく吟味して、自分の体と医師に相談しながら、決断していけばいいと思います。
 
ただ、医師資格を持っていない人が、処方箋の薬を「やめてみたら?」と助言することです。
徐々に減薬すべき薬を人の助言で急にやめてしまった人が、重症化したり、その副作用で一生治らない薬害が残ってしまったり、命の危険にさらされることもあります。
 
たとえ、今まで飲んでいた薬をやめるにしても、患者は、医師に相談して医師の許可を得て、指示通りにやめる必要があります。
 
12.もっと外に出るべきだ。
自由に外出できるなら、地球の裏側に今頃いますよ!という患者もいるはずです。(笑)
 
重症患者でも、調子がましな時期に、車椅子でコンビニやスーパーに連れ出してもらえるようになる人もいれば、何年も、365日24時間寝たきりで、全くベッドから起き上がれない状態の患者もおられます。
また、軽症や中等症の患者で、仕事や家事をしている患者も人前では頑張っていますが、遊びや外出など到底普通の人のようにはこなせなません。
光過敏や音過敏、臭い過敏、化学物質過敏などで特定の守られた環境でしか活動できない方や、暑さ、寒さの不耐性や激しい痛みで、外出が困難な方もいます。
 
それでも、今与えられている環境の中で、患者は、必死に生きています!
外に出たくても、出られないのが現状なのです。
 
 
13、あなたは怠け者なだけだ。
いつも寝転がっていたり、仕事も家事もしないME/CFS患者は怠け者に見えるかもしれません。
 
時に、自分でできることも、体力を温存したり、症状が出ないようにするため、「あえて」しないこともあります。
 
人ににすべてをやらせている姿を見たら、「この人は、病気だからって、甘やかされている!」と陰口を言われることもあります。
 
とにかく、はじめて会う人には、一言、「元気そうに見えるけど、目に見えない症状が色々あって、できないことが多くて、人の助けが必要なんです。」と一言言っておくと、わかってくださることが多いです。
 
家族には、何かをしてもらうたびに、どんなに小さなことでもお礼を言うようにしています。
 
介助をしてもらうことは、当たり前のことではありません。
病人を抱える家族の苦悩は大きいものです。
と同時に、病人の心にも、家族に申し訳ないという罪の意識があります。
「ごめんね。」よりも、「ありがとう。」と言うことを心がけています。
でも、最もわかってもらいたい家族、そして、理解と協力が必要な職場や学校の理解を得られない患者は、どうでしょうか。
怠け者扱いされ、必要な援助や精神的サポートも与えられず、苦しい症状に加えて、孤独に打ちひしがれます
そして、実際に、買い物に行けないから今日食べるものがない、生活苦で治療費もままならない、障害者手帳をもらうための手続きをする体力がない、、、
  
患者にとって、周囲の理解と協力は必要不可欠です。
どうか、ヘルプサインを出している患者の声なき声に気付いて手を差し伸べてください。
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群は、日常生活の質を著しく低下させる重篤な慢性神経免疫系疾患です。
ME/CFS患者たちは、専門医の不足と無理解、医療機関の受け入れ不能、障害者手帳の取得困難、福祉サービスが受けられない、家庭や学校、職場の無理解などによって、何重もの苦しみに耐えながらも、少ないエネルギーで、与えられた命を生き抜く「勇士たち」です。
決して、怠け者ではないのです。

幾重にも重なるME/CFS患者の苦悩

何の病気だかわからず、ただ、不調と症状に追いかけられる日々、いくつもの病院をかけづりまわり、検査と異常なしの繰り返し、
専門医にたどりつき、確定診断を受けるまでのいばらの道、特効薬や確立した治療法もなく、なんとかして回復する方法を模索する日々、障害者手帳を書いてくださる指定医にたどりつくまでに受ける屈辱と偏見、理解の足りない家族や周囲から受ける辛辣な言葉の剣。
その旅路の中で、支援者や温かい人々と出会い、病気にならなければ得られなかった「気づき」や人間として成長する機会も与えられている人もいれば、今は、まだそこまでたどりついていない混とんとした状態の中で、生きることに希望を失い、苦しみ悶え、助けを必要としておられる方もいると思います。
こうしてみると、慢性疾患患者にどんな言葉をかけたらいいのか、わからなくなります。
 
でも、きっと、、、
「そうなんだ。今、そんな風に感じているんだね。」
 
「そうかあ。そういう状況にあるんだね。」
「何か私にできることある?」
相手の話をよく聴いて、ただ信じて、受け止めてもらえることが、孤独や無理解に苦しむ難病患者への慰めにつながっていくのかなあと思います。
 
何百の助言や叱咤激励より、傾聴され、受容されていくことは、ハグのように温かい。。。
それが人に寄り添うということなのかなと思わされています。