米国医学研究所が慢性疲労症候群の新しい病名を提案 Systemic Exertion Intolerance Disease(SEID)





米国医学研究所が、昨日、慢性疲労症候群の新しい診断基準と新しい病名を提案したことで、CFS業界がざわついている。

主症状である労作後の不調(倦怠感)という特徴を反映するため、
Systemic Exertion Intolerance Disease(SEID)という病名を提案している。

日本語に翻訳すると、「全身性労作不耐性疾患」ということになる。



以下に、さまざまな記事から内容の要約をまとめてみた。

委員会では、筋痛性脳脊髄炎(ME)/慢性疲労症候群(CFS)という病名に代わってこのSEIDという病名を使用することを推奨している。

「このレポートが主に伝えたいことは、ME/CFSが深刻で慢性かつ複雑な多系統にわたる疾患で劇的に患者の活動を制限する病気であるということです。

最も重篤な場合では、患者の生命を破壊することもあります。

この病気は、実在するのです。」と書かれている。

レポートには、また「84%-91%の患者がまだ診断を受けられていない」ことや、診断を受けるのが困難な理由として、医療者がCFSを重篤な病気であることを知らないことやCFSを心因性の病気や患者の想像に過ぎないと考えていることをあげている。


委員会メンバーのジョン・ホプキンズ病院の小児科医ピーター・ロー氏は、

「新しい名前はこの病気の主な特徴をより直接的に表しています。
それは、身体的、認知的労作に対する不耐性です。」と語る。

9000以上の研究の見直しと専門家からの証言、人々の意見から、委員会は慢性疲労症候群という病名が多くの患者に汚名と矮小化という害を与えてきたと結論付けたとのこと。

筋痛性脳脊髄炎(ME)については、この病気の主症状を明確に示すものではないと言及している。

彼らは、筋肉痛が他の症状より顕著ではないということと、脳の中枢神経の炎症があるという研究結果があっても、その役割が証明されていないという理由で、この病名は適切ではないと主張している。


これまで少なくとも20以上の診断基準が存在し、医師や患者、患者家族だけでなく研究者を混乱させてきたが、今回提案された診断基準は中心的な症状に焦点を当てているそうだ。

3大基準は、

1、休息等によって回復しない少なくとも6ヶ月以上続く仕事や勉強、日常生活における能力低下や障害

2、労作後の不調(倦怠感)

3、疲れの取れない睡眠

そのほか、この診断基準で診断されるには、認知機能障害、または、起立不耐性のどちらかがなければならない。

このレポートは、“Beyond Myalgic Encephalitis/Chronic Fatigue Syndrome: Redefining an Illness,”と呼ばれるものだ。

(原本はこちら)


この名前を割り出すのに、100以上の選択肢があげられ、匿名で選ばれたが、委員会メンバーのRonald Davisは、「非常に大変だった。これが完璧な名前だとは思わない。」と話している。

この名前が絶対的な名前だということではなく、慢性疲労症候群という病名からくる患者が受けている被害を止めようとする試みの第一歩というスタンスらしい。


この動きに対して、もちろん、さまざまな反応がある。


ME/CFSに加えて、”3つ目の名前も同時に使われるようになれば、「はい、私は、MECFSSEIDにかかっています」と言わなければならなくなるかもしれないが、たとえ、病名が50文字になろうが、CFSよりはましだ!”という意見もあった。

逆に、MEという病名を好む人々は、すでに反対キャンペーンを行っている。



すでに昨年から世界のME/CFS専門医や支援者たちは、米国医学研究所IOMが新たに税金を使って新しい診断基準を作成することに反対し署名を行ってきた。

彼らは、国際診断基準を基本にすべきだと訴えている。

病名や診断基準に対する論争は、研究が進み、病気の原因が究明されるまで、まだまだ終わりそうもない。



ところで、慢性疲労症候群や線維筋痛症は、厚生労働省の指定難病の医療費助成対象の候補610からもれたそうだ。

厚生労働省の指定難病検討委員会は4日、難病対策の新制度で医療費の助成対象の候補となる610疾患のリストを公表した。

この中から約200疾患を3月中に選び、今年夏から助成する。リストは、指定難病検討委員会の議事録や資料を公開する厚労省のホームページで閲覧できる。

検討委ではリストの中から神経筋疾患の「筋ジストロフィー」など41疾患について議論し、助成対象とすることに大きな異論はなかった。

線維筋痛症や筋痛性脳脊髄(せきずい)炎(慢性疲労症候群)については、患者数が助成対象要件の「18万人未満」を超え、客観的な診断基準もまだないためリストから除外された。」とのこと。